先月末、脳梗塞から入院してた父があっけなく他界してしまった。2週間の入院だった。コロナ時期なので全く病室に入れず、担当医師ともLINEで会話したりと、ひしひしとこの時期の辛さを思い知った。 よく、ご両親は音楽関係ですか?と聞かれるが父は全く音楽と縁がなく普通の(いやちょっと変わっているか?)の人だった。何度も父母は離婚してるので自分と一緒のときがやや分断されるのだが、一緒のときは自転車のパンクからガレージまでなんでも修理してしまう人、そしてほとんどのことを自分でやってしまう人だった。 そんな父は即断即決の性格だったので突然何を思ったか築10年くらいの家を破壊し建て替えた。 そのころ私は高卒3浪中で実家から徒歩30分くらいのより田舎の牛小屋の前に自分小屋を借りて作曲の勉学に励んでいた。何ヶ月かして家は建て替えが終わったので家族は皆その家に住み始め、私もありがたく2階の新しい部屋にボロ屋で使っていたアップライトピアノを入れ住み始めた。日当たりも良く、綺麗で何の文句もない家だったのだが、やはり1階に入れた母のピアノの音が防音にしても漏れてくる。ピアノを習いにくる人たちの声が気になる。自分の聴いている怪しげな現代音楽が漏れているのも気になる。和声課題を弾くのも気になる。と、牛くらいしかいないところで2年近くひとりで浪人生活してしまった私には新築の家は気が散ってしょうがない。 覚悟決めて父に言った、元のボロ屋に戻りたいと。 そして家をまた出た。もちろん浪人なのでその家を借りるお金も父から出してもらった。 受験生だし受かる約束もないのに新築の家に自分の部屋まで作ってもらったのに出て行ったのだ。あれは酷かったなあと思う。
私もまあ切羽詰まっていたのかもしれない。
私なら「いいかげんにしろ!」とか怒鳴ってしまうのかなあと。
信じてあげられるなら親は黙って金を出せ
は、果たして正解かどうかはわからないが。
なかなか出来ない事だなあと思う。その事をいつか父に感謝というかありがとうを伝えたかったのだが果たせずだった。
おかげでその翌年、浪人も終わった。
そうして、今は母も他界してしまっているので、静かな家だけが残ってしまった。
私は結局その家に両親とちゃんと住んだことはなかったということになる。
また古くなってしまったその新築だった家を修理しなくてはならないぞ、と。
Comments